夜のてんてき

よるに書く日記

日記5 

バレンタインの話。

 

 

先々週末に私は何時間もかけてバレンタインのチョコレートを選んだ。全部で5つ。全部のチョコが隅から隅まで本命で、あげたい人の分だけ、あげたい人にあげたいものを選んだ。1つは恩師に、2つ目はチャーミングで可愛いおじさまに、3つ目は付きっ切りで私のお世話をしてくれるスケべな上司に、4つ目は私を守ってくれる優しい上司に、5つ目はいつも私の頭の中をいっぱいにしてくる大好きなあの人に。

でも結局私は今年のバレンタインをふいにした。

 

バレンタインの日私は会社に行かなかったんだ。でも行かなくて良かったと後から知った。

彼は、当日の夜、私の知らない女の子とご飯をしてチョコをもらっていた。そんなちゃんとした、食事付きの100点の楽しいバレンタインの夜のおまけになるなんて絶対に嫌だったから、あげられなくて正解だったんだと思う。

もちろんその人と彼が付き合ってしまうかなんて私にはわからないけど、でもやっぱり私の知らない世界で、私の妄想が及ばない距離に、彼の人生があるんだって思うとすごく辛かった。当たり前すぎるけど、でも近くにいてほしい、同じ世界に住んでいたいっていうのが恋愛感情だから。私は普通に、真っ当にショックを受けた。ちゃんと恋してたから。

 

先週の頭、私は会社で1人でパニックを起こして1週間丸々会社を休んでた。

それがバレンタイをふいにした理由。

会社に毎朝全休します。全休しますと送る作業だけして、あとは寝ていた。時々ふいにどうしても気持ちよくなりたくて、美味しいご飯を作って食べたり、高いものを買いに行ったりした。能動的なことを何もしていなくても、買い物やネットで常に刺激を絶え間なく送り続けることができるから、今ってすごくつらい。

 

玄関に置きっぱなしになっているチョコレートの紙袋と目があうとすごく苦しくなる。ネットのホワイトデーの記事を見てもムカつく。

 

私は彼が自分に気がある気がしていた。本当に好きなんじゃないかって思うときが良くあった。でもそれは本当に気がしていただけだから。ロマンチックな妄想の世界に住んでいたのに、ふいに一番おきて欲しくなかったことがおきちゃった。あの時の仕草や、空中でかわしていた視線の長さは?って恨めしくなる。

 

来週会社に行きたくない。仕事をサボった後ろめたさじゃなくて、彼に心配されたいから。私に元気がないって気が付いて欲しい。向こうから連絡が欲しい。

 

馬鹿だけど本当にそんなこと考えてる。どうしたらいいんだろ。

手を滑らせて、私あなたのこと好きだよって送ってしまいそうぐらい馬鹿になってる。

日記4 

年末年始のことを何も書き留めていなかった。

いつも目の前を見ているようで見ていない。人生を生きていない。という映画の中の悪役の台詞が頭に残った。

 

年末はなるべく実家に帰りたくなくて、31日の夜まで家にいた。溜めていた洗濯をしたり、買ったまま半年も植え替えずにいた植木を植え替えた。

今は植え替えの時期ではないとネットで知ったけど、かさかさになって水を吸わなくなった土が気がかりで、どうしても変えたかった。ふにゃふにゃのプラスチックポットの中でミミズみたいにみずみずしい根っこがかたく伸びていた。

 

洗濯をしたり、買い物をしたり、掃除をしたり、物を捨てたり。創作活動以外の、ありとあらゆることをした。この1年、私は頑なに創作活動から逃げていた。理由は明白で、ただ怖いからだった。

 

去年の夏、会社のデスクに座っていると動揺が収まらなくなった。私は社会不適合者なんだって思い込みを形にしたくて、ADHDの診断をもらった。自分がADHDかどうかなんて、本当にどうでもよくて、でもただパニックを起こしては、薬を飲んだり、お酒を飲んだり、タバコを吸ったりした。時々食べ物を吐いて見たり、知らない人に若いからだを提供した。私は人と違うっていうことを、自分のために演じて見せているようだった。きっとそうだった。

 

流れに逆らうことに必死で、苦しかった。高校の時や、大学入学したての時を思い出した。生きるのって難しいよねって、毎日のように自分では思っているけど、人から言われると何だか殴りたい気持ちになった。何だか私は1年間、地球以外の何処かで生きていたような気がした。いつも不機嫌で、何かに不満を持って、不安を抱えていた。

 

私はなんとかなるって自分に言い聞かせながら、毎日繁華街をふらついているだけの年始だった。創作をしていないと異様にお金が減る。自分を過信してはいけなくて、でも過去を後悔してもいけなくて、現在の現実を、フィルターなく見つめること。でもこれがどうしてもできない。なぜだかわからないけど。

 

 

 

 

 

 

 

日記2 ポーチのふくらみ

今日は昨晩から眠らずに夜通し映画を見ていた。

 

華やかにオールをして遊んでいたという友人から明け方にラインが来た以外、あるいはそれを含めても面白い夜じゃなかった。

 

恋愛相談を誰にもできない。職場の人にはもちろん相談できないし、だからって学生時代の友人にわざわざ自分の今のしどろもどろっぷりをひけらかして可愛い年齢じゃない。他人の恋愛話で大喜びしてくれるのは高校生までだったらしい。

それ以降はみんな恋愛は黙って黙々と、そしていたって順調に進めているようだった。私みたいにワーワーと慌てふためいて、出会い系チャットで知り合った男の人にラインで相談したり、占い電話を使ったり、ブログを書きなぐったりしない。

 

まだ残された2018年の3日間、いつだっておしゃべりができるライン上で「良いお年を」と今年のコミュニケーションを締めくくられてしまった。圧倒的に悲しい。あけましておめでとうなんて送り合うはずもないから、会社が始まるまで全てがお預けか。と思うとなんだか悪さをしたくなって、今朝方突然チャットで捕まった男の人と寝て来た。新宿で早朝に待ち合わせ。そのままホテルに行って10時代に解散した。

 

本当に久々に体を使ったから、帰宅すると下着に血がついていた。

相手は痩せ型の男性で、同じく痩せ型の彼のことをふっと想像するとものすごく興奮した。やっぱりエッチは好きな人としたいと思った。裸をみたいし、私の裸に触って欲しかった。初めての人とのえっちは今でもいつも恥ずかしい。だから恥ずかしがっている私を見て欲しい。歯切れの悪いいちゃつきを彼としたい。ベットの中で、焦る彼の手を制止するように手を握る私の掌を愛おしんで欲しい。今日は朝シャワーを浴びたから、肌からまだ甘いボディークリームの香りが漂っていて私の肌は最高潮だったのに。

 

 

会社の締め日だった昨日、生活がぐずぐずになっていて昼過ぎに出社した。打ち合わせで脳を疲労させた後、17時から17時半まで私は口紅を塗り直すことと不慣れなフレグランススプレーを吹きかけ直すのに右往左往していた。いつもスカスカのポーチがこの日だけ化粧直し用の化粧品でパンパンだった。

彼が来る。私がそう頼んだ。見せて欲しい資料があると伝えた。彼はお願い事や頼みごとをすると、恐ろしいぐらいに応えてくれる。その対応で私は余計につけあがる自分を抑えられない。だってネットにお願い事を張り切って聞いてくれるのは脈ありって書いてあるから。

 

やって来た彼が当たり前に私のデスクの横に腰掛ける。私はそれだけで嬉しい。数ヶ月前までは所在なさそうに寄りかかって立っている彼を見上げてお喋りしてた。しばらくすると彼は立ち話を諦めてリュックを背負ったまま椅子に座るようになった。そしてつい先日から、慣れた手つきで荷物を降ろしてストンと深く腰掛けるようになった。私の隣の席に。

 

男の人は支配欲が強いらしいけど、多分私も負けじと強い。人差し指と比べて薬指が圧倒的に長いからかもしれない。私の隣の席に、わざわざ腰掛けてくる彼が、もうとっくに自分のものだと思えてしまって仕方がない。近隣で一番、この猫に懐かれてるのはこの私だって、そういう気分になる。だってみんなのデスクの横に、この子こないでしょって。

 

絶対的に見ても見なくてもいい資料をわざわざ見せてもらう。別にデータを送ってもらえば済むし、適当でいいんだよそんなのと言われればそれで済むレベルの、本当にただ会いたいがための口実だった。(「年始に出さないといけない、この書類どうやって作ってるか、見たいです」私がこんな、あざといOLになるとは思わなかった。)会って、近づいて、わざわざ話す口実を作っただけ。彼だって本当はわかってるんじゃないか。わかってても見せにきてくれるんじゃないか。それとも本当に私が困っていると思ってくれているのかもしれない。でも前者後者どっちだとしても、私は彼の好意を感じずにはいられない。すっかり付け上がってるから。

 

会話はいつも彼が大抵聞き役だった。私は聞上手な彼に比べて圧倒的に質問も返答も下手くそだ。会話の端を拾い上げて質問にして返す。

モテるための技術として取り上げられているその会話術を何度読み返したところで、全く身につかなかった。

 

ここ1ヶ月、行き帰りの電車の中で、「脈あり男性の仕草」を延々と読みふけってはマルバツをつけて一喜一憂するのが日課になっていた。そんなことをし始めるともう収集がつかなくて、あとはもう彼の一挙一動にこれは脈アリの兆候かもしれない、いや無しかもしれないと過敏になって、それをジャッジするためにネットや顔を知らない出会い系チャットのおじさんたちに「ねえねえこれは脈あり?」と聞き込み調査をする哀れっぷりだった。

 

重たい扉を、私が通り抜けるまでできる限り支えておこうとしてくれるのは脈アリ?

帰り道、線の違う彼が私の線の改札ギリギリまで寄ってくれるのは脈アリ?

頼ると全力で応答してくれるのは?

ラインがこの間1時間も続いたことがあったのは?

でも絶対彼からラインがくることがないのは?

 

1日ずっとこの調子だった。

 

見ても見なくてもどっちでもいい資料のお手本を見せてもらってから、私は彼が帰るのを待った。もうこれ以上暇が潰せないやと判断した時、私は帰りましょうと誘った。何度か、わざと残業時間を合わせて帰った前科もあるけど、彼が帰るよと声をかけてくれた時もあった。いつでも分かれ道で別れることができるし、帰りましょうという私の誘いを断ることもできたけど、でも私の改札までの短すぎる道のりを、ぼんやり一緒に歩いてくれるだけで私は嬉しい。もしかしたら全部全部が私の妄想かもしれなくても。

会社の脇のイルミネーションの中を通る時だけ、毎度無言になる。華やかな場所を嫌う私たち2人が、街の喧騒を無視するという行動を共にしている。イルミネーションを馬鹿にするんじゃなくて、ただ無言でそこを通り過ぎる儀式が、私はなんだか好きだった。

 

やめればいいのにクリスマスに電話占いをした。馬鹿だし病んでたから。

占い師には彼には4月ごろ告白されます。でもおつきあいするまで2人で食事に行くようなことはない。彼はそういう人です。と言われた。でももしかしたら今日は、占い師の予想が外れて、2人で食事ができるかもしれない。そう思った。そう思ったがゆえの化粧ポーチのふくらみだった。でも結局私は2018年中に、彼と2人で食事をすることはなかった。

日記1 受話器で声を隠して

 今日は会社をサボった。

目が覚めたら12時で、予定も何もないから東急ハンズに行って土と植木鉢を買った。

夏前に買った観葉植物をビニールポットのまま育てていて、自転車を買うよりも新しい財布を買うよりもまずは植木を植え替えないといけないと思ってたから。

でも鉢底用のネットと軽石を買い忘れて、しかも元気のない植物を、この寒い時期に植え替えていいのかってやっぱり不安になってとりあえずやめた。

年末までにまた東急ハンズに行けたら、ネットと軽石を忘れずに買って植え替えてみる。

 

 

最近本当に久しぶりにだけど好きな人ができた。

1年前のクリスマスにちょうど振られてから1年間、あっという間にすぎた。

前付き合っていた人は恋愛をして付き合ったわけじゃなくて、付き合ってから恋愛した。それまでは本当に友達かそれ以下だった。だからこうやってバカみたいに「ああ好き!」と大騒ぎして、なんとか距離を縮められないかと試行錯誤するのは、ほぼ始めてのことだ(青春未経験)

 

今同じ職場に好きな人がいる。ずっと前からの知り合いで、でも急に好きになった。

紙の日記によると(紙の日記とブログって一体どう書き分けたらいいの)

8月23日木曜日に恋に落ちている。

電話しながらフラッと近寄ってきて、私のデスクに寄りかかりながら電話を続ける彼と目が合った時、ガランっと心臓が落ちる音がしたと書いてある。

 

私はその時のことをよく覚えている。確かに心臓が5センチ〜10センチ落ちた。その時確かに、岩か金属が、落ちたみたいな衝撃と音が、体の中に響いた。

 

彼はよくうろつきながら社内で電話をかけている。誰よりも声を潜めながら、さらに人が居ない場所を求めて歩きながら電話をする。その日は確かもう人が少なくなった夜だった。終わりのめどがついてきた電話を耳に当てながら、私と視線を合わせながらゆっくりと近づいて、私のデスクにもたれかかる。

そして電話が終わるまで、私たちは奇妙に時間を共有する。

電話の最中、何度も目を合わせる。彼は電話越しの相手に仕事の指示を出しながら、じっと無表情にこちらを見てくる。私も負けじとじっと見つめ返す。人見知りに輪をかけたような2人が、無意味に視線を交差できる瞬間。暇な電話の最中、会話の義務から逃れて、視線と空気と時間を共有する。

その間私の頭は空白で、視線だけ空中と彼の輪郭を行き来させる。彼の視線がこっちに向いていない間は、スケッチする時みたいに彼の形をどんどん吸収していく。見上げた時の顎の曲線。一見細く見えて実はしっかりと縦幅のある目。ああ私この人の造形やっぱり好きだなって、削った鉛筆の代わりに視線を走らせる。

 

8月23日までは恋に落ちていなかった。だからなんの迷いもなく彼に近づいたし話しかけられた。でもガランと音を立てて私の心臓がどこかに落下してしまってから最近まで、彼の一挙一動に舞い上がったり落ち込んだりを繰り返した。アプローチしては離れられて、離れては近づかれる。人嫌いな野良猫を飼いならすまでの攻防戦だ、これはゲームだと自分を励ましながら過ごした。日記もバカな中学生みたいなことしか書いてない。恋に落ちると人はチンパンジー並みの知能になることが科学で証明されているらしい。

8月23日以前の方が、うまくアプローチできていたと思う(アプローチのつもりはなかったんだけど)そのアプローチの貯金が、少しずつ効いてきたのか、それとも彼の不安定な態度に動じない私に対して警戒心が無くなったのか、距離を故意に作られることが無くなったと思う。何がきっかけかはわからないけど、アプローチしたところで突き放されることは無くなった。

 

 

tofubeatsのRIVERとHYの366日とフジファブリック若者のすべてをずっと聞いてて我ながら頭が沸いてると思ってる。

1月1日 日記 わたしは知らない人とセックスをする

f:id:bijutsukeijoshi:20160101210549j:plain

部屋の外から韓国語か中国語で話す声が聞こえる。目をつむっていると薄オレンジ色の光だけが見えて、いつか中国映画で見た退廃的なボロアパートの一室にいるような気持ちになる。

 

頬をすり寄せて、出来る限り触れ合ってる表面積が多くなるように、体は複雑に絡み合ってる。ピッタリとくっつきたい時、手足が本当に邪魔といつも思うけど、今日はいい具合に手足も納まって肌と肌をすり寄せられていた。

 

暖かい、嫌な匂いがしない肌。でも気合を入れて塗ってきた自分のネイルにはきついバラの香料が付いていて、塗って来なければよかったと後悔した。何をしていても自分の指先が香るなんてやっかいだった。とくに今日みたいな日は。

 

いつものホテル街から少し外れたところで待ち合わせたその男性は、想像よりもずっと内気そうな顔をしていた。事前に送られていた数枚の写真やいくつものハメ撮りに写っていたどの顔とも違う顔だった。

月並みだけどこんなお兄さんがあんな動画を送ってきていたなんてと思ってしまう。相手もきっとわたしを見てこんな子が自分のハメ撮りを見て喜んでいたなんてと驚いているかもしれないけど。

 

お兄さんは少し緊張していた。私も緊張してお腹が痛かったけどそういうのをごまかすのは多分10才も年の離れたお兄さんよりもわたしの方が上手い。落ち着かないと手が動いてしまうのが嫌だからわたしは手が動かないようにずっと太ももの下に挟んでいた。

手元にあるストローのゴミを折りたたんだりちぎったりしている落ち着きの無いお兄さんの指先をじっと見つめながら話をした。ラインでしたような下品な話は一切ない。お兄さんの口調は、多様されていたかわいい顔文字が似合う話し方じゃなかった。もっとずっと穏やかで、眠たそうで、そしてすこし訛っていた。破廉恥な動画の中ででいかにも男性らしいエロい言葉を運んでいた声は本当にこの声だったかしらと耳を澄ませるけど、うまく思い出せなかった。

 

チェックインの5分前になってホテルに入る。いつもはラブホテルのサービスタイムを使うから時間がたっぷりあるけど、今日はビジネスホテルだから短い。地方から数年前に上京してきたというお兄さんはラブホテルに強い抵抗感があるようだったけど、次会うならラブホテルをすすめようと思っていた。でも実際に会ってみるとなるほど、彼がラブホテルの広くて開放的な部屋でくつろいでるところが想像つかなくて、次も薄暗くて狭いビジネスホテルで良いやと思う。

 

会う前、私は今までで見たことがないぐらいエロいハメ撮りいくつも送ってもらっていた。私はその動画を見て完全に気持ちが盛り上がっていたから、こんな数時間で足りるかなー。なんならホテルをはしごしてもいいかもって気持ちだった。

結果として、4時間はあっという間に過ぎた。もう部屋を飛び出さないといけない時間だとわかった時、お兄さんは心から驚いた声で「4時間に感じた?」と言っていた。わたしは普段からラブホテルを使ってて時間感覚があったから、正直そろそろ4時間というのはわかってた。セックスするのに3時間や4時間は短い。でもお兄さんの体感時間が短かったというのはなによりも嬉しいことだった。

「私も短く感じた」 本心でそう言った。

 

 

出会い系で知り会った人とその日にセックスするのは私の生活の一部なってるけど、これって異常なことだよなーって気が付いたのは今朝だ。遠足の前みたいにワクワクしている自分に気づいて、おかしいなって思った。だって見たこともない相手とセックス目当てにいきなり会うなんて本当は怖いはずだから。 

 

ホテルを出てファミレスに入る。ご飯を食べてると腹痛がして、でもなんでもない顔をしてトイレに行く。下着と、トイレットペーパーに薄い血がついた。処女を失う時でさえ血は出なかったのに、

 

彼の行為は激しかった。事前に見せてもらっていた動画のまんまで、でもわたしは動画の中の知らない女子大生のように気持ちよさで体を震わせることはできなかったんだ。少し痛いぐらいだった。刺激でたくさん声が出た。ゆっくり動いてと何度か言っても、なかなか相手の手や腰の速度は落ちない。セックスの仕方ってそんなに柔軟なものじゃない、とくに男の人はそう。

こういう時にきちんと痛みを伝えられないのは本当に良くないことだと毎回思う。きっとこんなこと友達に言っても信じてもらえないと思うけど、たとえ2年前からセックスしている相手でも最中に顔を見ることができないぐらい私はシャイだ。正常位では両腕で顔を覆うのが癖になっているぐらい。

 

彼とのセックスは正直期待していたものではなかった。いや、彼のセックスは動画のとおりの激しくてとてもエロいセックスだったけど、動画の中で大きく喘いでいた女子大生ほど私の体は激しさに耐性が無かったから。ちょっと期待しすぎていたところもあったけど、でももちろん彼のセックスが痛みだけだったわけじゃない。いつも耐えてる程度のヒリヒリとした痛みと一緒に、心地よい快感もあったし、声を出さないと耐えられない程の強い快感もあった(強すぎる快感は快感に感じないけど)

 

それになにより彼の動画には写っていなかったセックス前後の穏やかな時間がとても心地よかった。一言も喋らない。お互いの顔がうっすらと見える程度の暗い部屋。部屋の外からずっと聞こえていた外国語の会話、いつまでも温まらない冷え性の足先。セックスの快感は共有できなかったけど、抱き合って目を閉じた時の心地よさには手応えがあった。きっと向こうもそう感じているという手応え。

 

知らない人と会ってこういう手応えがあるのは本当に心地よくてやめられない。私にとっての一番の麻薬だ。打ち解けあって好き合っている幸福なカップルには味わえない感覚がある。退廃的なボロアパートという舞台が似合うような、何もかもが堕落した関係。過去も未来もなくて今だけ。お互いがただただ独りよがりな存在なのが、痛いぐらいわかるの。

どんな相手とするよりも、信頼感も期待も無いこの時のキスがなによりも官能的だと本当に思う。抱き合うと、捨てられた猫になって寄り添っているような気持ちになる。薄汚くて身寄りが無い、人に指を刺されるような滑稽な格好で、お互いの匂いを馬鹿みたいに嗅ぎ会うの。私達の間にはなにも無い。でもなによりも必要なもののようにお互いを激しく求めあってる、触れ合っていないとつながりが切れるのがわかるから。極端なぐらい2人の間に何かがあるのを怖がる、空気でさえ冷たい暗闇みたいに怖い。気持ちは決して軽く無いの、むしろなによりも暗くて重たい。

 

 

今日味わったこの堕落した感覚が本当に心地よくて、ダメになりそうなぐらい。溶けそうだねって彼が囁くより前から私の頭は部屋の匂いで溶け始めてたんだ。この感覚が長続きし無いのはわかってるけど、久しぶりのこの官能的な気分にもうしばらく浸っていたい。またこうしてどんどんダメになっていくんだって思いたいの。

 

念願のピンク映画館に行った話〜上野オークラ〜

f:id:bijutsukeijoshi:20151218001333j:plain

 

どうしても行きたかったあの場所

その存在を知ったのはいつのことか忘れてしまったが、今現代にピンク映画館なるものがあると耳にしてから私はすっかりピンク映画館のことで頭がいっぱいだった。

そしてついに今年、念願かなってピンク映画館に足を運べる機会を得たのだ。

いくら思いやりのあるヤリマンである私であってもさすがに1人でそんな場所にいくのは危険な気がして、いつもの一人旅のごとくふらふら足を運ぶことはできずにいた、しかし、2年程仲良くして頂いているお兄さん(かたくなにセフレとは呼ばない)にだだをこね続けついに一緒に禁断のピンク映画館に行ってもらえることになった。

 

場所は調べると一番ヒットする上野オークラに決定。上野オークラに行ってきました系ブログもしっかりと読み込み、予習はバッチリだった。とにかく2階にだけはいっちゃだめなんだな!

 

いざ上野オークラ

意気揚々と上野駅で待ち合わせ上野オークラへ!当日はたしか土曜日か金曜日で、辺りはすっかり夜になっている時間帯だった。道はお兄様に任せていたためまったく覚えていないがとにかく上野公園の入り口?を右手に、アメ横を左手に見ながら大通りを突っ切ると上野オークラが見えてくる。

まさかこんな大通り添いにデカデカと看板があるなんて、と驚くほど目立つサイズの看板がたっている。

どうやら最近移転したようでそんなような案内板があった。案内板の指示にしたがって大通りから一本奥に入る道に進むと左手にそれらしきビルが。電気がこうこうとついていて明るいガラス張り、しかし暗闇にまぎれてエッチな女優さんたちの看板がたくさん張り出されていた。なんと私の大好きな一押しAV女優涼川絢音ちゃんと会えるイベントがやっていたらしい・・・・そもそもイベントなんてやっている程活気づいている場所だとは思っていなかったのでそこでも驚いた。もっと淡々と映画だけを流している場所かと・・・

 

さてさて中に入ると更なる驚きが待っていた

 

まず、まるで市役所のような簡素な外観の扉を開けると目に入ってくるのは券売機だ。映画のチケットはすべて券売機で買う仕組み。2階席用のチケットはボタンが別れていたような気もするけど忘れた。値段は普通の映画館と同じぐらいで1000〜2000円だったと思う。

そして券売機から振り返ると目に飛び込んでくるのは待合室の椅子でくつろぐお客さんたちの姿だ。基本的にはおじさん、あるいはおじいちゃん以上の年配の男性がほとんど。ピンク映画館という場所がそう見せているのかもしれないがどことなく異様に見えなくも無い・・・そして中には女装した男性の姿も2人程見受けられた・・・同年代の男の子の女装なんかには見慣れているはずだったけど、赤の他人の成人男性が同じ閉ざされた空間で女装をしている姿をみるとなんだか胸がザワザワするもんだ。

そもそも上野オークラに入った瞬間から外界とはあきらかに違う空気に包まれた感覚になった。それは私がたんにビビっていただけかもしれないし、あまり見かけない私達カップル客に向けてジッと視線が集まっていたからかもしれない。

 

いよいよ劇場内へ

待合室の異様な空気を背中に感じながらスススス・・・と奥に進んで劇場の大きな扉を開ける。大きなスクリーンではSFもののAVが上映されていた。

お客さんの数はけっこう多いが、座席は1/3ぐらいしか埋まっておらず、その他数十名のお客さん(おじさま方)はスクリーンから見て後方の壁、つまり劇場出入り口の扉がある壁沿いにずらっと並び、立ち見で映画を見ている。異様な光景だ。なぜこの人たちは席に座らないんだろう。

扉を開けた瞬間から立ち見のお客さん、座席に座っているお客さんからも視線が飛んで来て私はもう前が見れない程萎縮していた。完全にビビりまくっている状態だ。

 

座席に座ってのんびり映画を見ようと楽しみに思っていたのにそういう場所ではないらしい。お兄さんに促されて、空いていた角の方に移動して映画を見始めた。

 

しかし、お客さんの雰囲気は異様で、座席から立ったり座ったり、うろうろしたり、立ち見の人も常にうろうろうろうろ劇場内を歩きまわっている。

どうやらしばらく映画を見ていると、この劇場内の落ち着きの無さの原因が私であることに気づく。なぜなら、皆が私のことをじろじろと眺めてくるからだ・・・!!!

うろうろと立ち上がったおじさま方がつぎつぎと私の前を通り過ぎていく、そして通り過ぎざまにじろりと私の方を眺めるのだ。中にはぐっと顔を近づけて足先から舐めるように私を見ていく方もいた。どうやら本物の女かどうか確かめに来ているらしい(?)

女装している方は多いようだが、本物の女がくるのはそうとう珍しいことのようだ。

私がビビリきっている時、劇場の落ち着きの無さに気づき「どうしたの?」と言いながらさっそうと登場した女装のお姉様が女神に見えた。それぐらい男の人に囲まれすぎているあの状態は恐怖を感じた。

 

一方そのころ隣に居るお兄様はというと、しらないおじさんにめっちゃ絡まれていた。「なにしにきたんですか〜」に始まり「彼女さん(もちろん私のこと)は露出癖とかないんですか?」「けっこう露出していく方もおおいんですよ」などなどかなり過激なことも口にしていた。とにかくずっとお兄さんの隣に居座りひたすらなにかを話し続けている。もしかしたら私と露出プレイをするようにうまく誘導したかったのかもしれない。池袋のピンク映画館にはそういう目的の変態カップルがおおいとかなんとか話していた。実際ピンク映画館にはハプニングバーもどきのイベントを求めて足しげく通っているお客さんも多いみたいだ。

あまりにもしつこく話しかけているので私の方から「話しかけないでください!」と言いたいところだったが、そんなことを言って急にキレられたら怖いし、ただでさえ目立っているのにこれ以上目立ちたく無いという気持ちが強くとにかく声を発することができなかった。

 

劇場内は終始そんなカオス状態だった。私の前を何人ものおじさんがぐるぐると行き来し、眺めてくる、そして隣ではお兄さんが知らないおじさんにずっと話しかけられている。映画なんてゆっくり見ることはとても出来ないし、そもそも行き交うおじさんと目があってしまうのが怖くて顔も上げられない状態だった。

その状態で30分ぐらいはじっとしていただろうか、お兄さんに「もう行こうか」と言われてやっとの思いで外に出た。なにせ「もう帰ろう!」と言いたいところだったが萎縮してぴくりとも体が動かないし声も出せなかったんだから。

 

上野オークラを出ると「気が済みましたか?」とお兄さんに呆れ顔で言われたきがする。いつものホテルをもとめて新宿に向かいながら、もうピンク映画はとうぶん行かなくていいね。と2人でためいきをついた。初めてのピンク映画はそうぞうよりもカオスで厳しいものだった。とても楽しめたとは言えないけど、もしももしもまた機会があるのなら是非行きたいと思ってる。

 いつかはピンク映画館にでもハプニングバーにでもどうどうと遊びにいって楽しんで帰って来れるような女になりたいもんだなあ。