美術系女子の話

美術系女子の苦悩系ブログ/日記と怒り、セックスと家族

漫画「匿名の彼女たち①」感想

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匿名の彼女たち

セックスワーカー萌えな私として読まずにはいられなかった「匿名の彼女たち」を読んだので、感想を書きたいと思う。

 

簡単に本書の説明をすると、30代独身冴えない地方周りの営業マンである主人公が、日本各地の遊郭をめぐりながら嬢とのプレイを楽しみ、そしてその感想をしみじみと述べて1話が終わるという一話完結式の風俗レポ漫画である。まさに風俗版「孤独のグルメ」的な立ち位置にある漫画ではないだろうか(孤独のグルメは一話も読んだこと無い)

 

ちなみに公式サイトでの紹介文では「エロくて生々しくてちょっぴり温かい、風俗叙情物語!! 」、帯文には「名前を変えるには、嘘をつくには理由がある」との文章が。

 

先に感想を述べると

案の定、女見下し勘違い男目線系胸くそ漫画でした。わーいありがとうありがとう

 

共感できない主人公〜勘違い男の肖像〜

まず「30代独身地方周りの営業マン」という設定は、風俗レポ漫画としては当たり前というか、ばっちりだと思う。実際私も営業マンと仕事中にエッチというのは経験したことがあるし、地方周りの営業マンなんていったら各地のキャバクラや風俗というのはかなり親近感のあるもんだろう。

 

しかし主人公のキャラクター設定がまあいかにもサブカルな感じの、見るに耐えない冴えない男だ。30代独身で部屋も狭い、かなり自意識過剰気味だし仕事に対するモチベーションもゼロ。ここまで男としての魅力は何一つ無い。

 

そんな主人公の趣味は風俗巡りだ。しかし彼は風俗嬢を愛してはいない。むしろ女そのものを人間として見下しているくそ勘違い男として描かれている。そんな彼の勘違いっぷりは第一話からエンジン全開だ。

まず自分がキャバクラ嫌いなことを語るシーンでの台詞

 

「オレはキャバクラが嫌いだ・・・・そこには女の本質がよく現れているから」

 

本質なんてどこにもありませーーーーーーーーーん!!!!ヲイヲイヲイちょっとまてよ。キャバクラに女の本質があるなんて思っている人本当にこの世にいるってこと?お話になりません。

 

そしてたたみかけるようなこの台詞

「キャバクラなんて、騙されに行く場所じゃないか」

「ヤツらは男を騙すために生まれてきた生物」

 

お話しになりません。誰も騙してません。

 

主人公はこんな理由でキャバクラを嫌い、それを理由に風俗に通っています。キャバクラと風俗の違いなんて対価が性的サービスか酒かという違いだけなのにね。でもこの主人公はいろいろ勘違いしていて、どうせ金を払うならわかりやすく物理的なサービスが頂ける風俗の方が良いじゃん!という理由で風俗に通っているわけです。

キャバクラに関してだけど、この主人公のようにキャバ嬢からの愛情かなんかがキャバクラの商品だと思って勘違いしてるひと多そうね、キャバクラの商品は間違いなく酒です。

 

そして漫画の内容として、これはすごいなあと思うんだけど、いちいち主人公が発する嬢への感想がめっちゃリアル。多分本当にこういうことを考えながら風俗に通っている人おおいんだろうな〜。とにかく風俗にガメツい男たちの嫌なところがすべて文字におこされています。ああ胸くそ悪い。

 

でも同時に、風俗初心者の人にはすごくわかりやすい風俗ハウツー本にもなってる。

まず単行本の使用も、全国遊郭マップが付いていたり、扉に毎回各地の遊郭の詳細が丁寧に描かれていたり、とにかくレポ漫画としての形式にはかなり力を入れているので、レポ漫画としてはとても充実したものなんじゃないかと思う。こうすればいい店かどうか確認出来るとか、風俗玄人の知恵がちりばめられているシーンもあります。

 

 

女嫌いの主人公

主人公は基本的に女嫌いな性格です。風俗嬢に対してもとても意地悪な気持ちを持っているし、基本的に見下しています。そしてセックスするごとに、嬢の生活や人格のことを勝手に妄想し勝手に1人の女の子の人生を客観視しているつもりになっちゃってる痛いヤツです。

 

主人公の勘違いっぷりは漫画中に充満しています。まず第一話冒頭に書かれている読者を誘い込むような謎の文句「いちばんさいしょについた嘘はなまえです・・・・」この一文だけでも十分この漫画の風俗嬢に対する斜めなスタンスが伺えます。源氏名は身を守るためでありやっかいごとを避ける為であり、そこには他人が期待するようなセンチメンタルななにかは1mmもありません。

でもみんな風俗嬢にはなにか廃退的な物語や叙情的なイメージを求めてしまうものです。この漫画もそうです。

 

そして主人公は立派な風俗客として、大変サービスには口うるさいです。お金を払ってるんだから心身ともに満足させるのが嬢の仕事だろ!という考えがとても強く、自分が気持ち良くなれない嬢にはすぐ意地悪な気持ちをむき出しにして彼女たちをなんとか蔑んでやろうと攻撃しはじめます。自分が気に入らないと風俗嬢に人格があることを無視してしまいがちなところを見ると、一見とても割り切って譲と付き合っているようにも見えますが、一方で「アンナちゃんとはいろんなことはなしたけど、彼女の“声”をなにひとつ聞いていない気もする・・・、近いようで遠いな」なんていう勘違いにも程があることも平気で考えちゃっています。

 

嬢に不快な思いをさせる事に対してはなにも罪悪感を感じないのに、嬢は自分に心を開くもんだと本気で思い込んでいる主人公の様子がとても真面目に描かれています。わたしのような見方で見るとそれはすごく滑稽。

さらにSMプレイで女王様にいじめられるサービスを受けた後に「結局彼女の手の平で転がされていたってことかな」なんて意味不明なことを言い出しながらアンニュイな気分にひたっちゃう所を見ると、そうとう物事を自分の都合の良いようにねじ曲げて解釈することが得意な様です。手のひらで転がされていたんではなくてSMプレイのサービスを受けていただけです。冷静になって!

 

 

この漫画に描かれているもの 

こんな調子でとにかく突っ込みどころの多い漫画です。

とにかく主人公の痛さが見所でしょう。30代独身彼女無し、狭いアパートで一人暮らしをする地方周りの営業マンという決して充実してはいないであろう自分の人生は棚にあげ、風俗嬢は自分より位の低い生き物であると言う前提条件の元、彼女たちの性的サービスを受け、そして勝手に彼女たちの人生を客観視した気分に浸り、そんな俺に酔っている痛い男の姿が描かれているのがこの漫画です。この漫画には風俗嬢に射精させてもらった後に、さらに彼女たちを使って精神的な自慰を楽しんでいる男性像が描かれているのです。そして描かれている風俗嬢の姿は、この主人公の主観で完全に描き直された姿です。

 

予想通りというべきか、私の求めていた本当の風俗嬢の姿や本音は微塵も描かれていなかった。この漫画に描かれているのはつま先から枝毛の先端まで全てが主人公の主観によって成り立つ女の子達です。しかしこの漫画には、実際に男性陣が風俗嬢に対して持っている生々しい感情(少なくとも私は知りたかったこと)、そして風俗に通う男性に限らず私達が普段からしてしまいがちである「他人の人生を客観視したつもりになってそんな自分に酔いしれる自慰行為」がまざまざと描かれている、そんな胸糞漫画でした。

 

 

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