夜のてんてき

よるに書く日記

1月1日 日記 わたしは知らない人とセックスをする

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部屋の外から韓国語か中国語で話す声が聞こえる。目をつむっていると薄オレンジ色の光だけが見えて、いつか中国映画で見た退廃的なボロアパートの一室にいるような気持ちになる。

 

頬をすり寄せて、出来る限り触れ合ってる表面積が多くなるように、体は複雑に絡み合ってる。ピッタリとくっつきたい時、手足が本当に邪魔といつも思うけど、今日はいい具合に手足も納まって肌と肌をすり寄せられていた。

 

暖かい、嫌な匂いがしない肌。でも気合を入れて塗ってきた自分のネイルにはきついバラの香料が付いていて、塗って来なければよかったと後悔した。何をしていても自分の指先が香るなんてやっかいだった。とくに今日みたいな日は。

 

いつものホテル街から少し外れたところで待ち合わせたその男性は、想像よりもずっと内気そうな顔をしていた。事前に送られていた数枚の写真やいくつものハメ撮りに写っていたどの顔とも違う顔だった。

月並みだけどこんなお兄さんがあんな動画を送ってきていたなんてと思ってしまう。相手もきっとわたしを見てこんな子が自分のハメ撮りを見て喜んでいたなんてと驚いているかもしれないけど。

 

お兄さんは少し緊張していた。私も緊張してお腹が痛かったけどそういうのをごまかすのは多分10才も年の離れたお兄さんよりもわたしの方が上手い。落ち着かないと手が動いてしまうのが嫌だからわたしは手が動かないようにずっと太ももの下に挟んでいた。

手元にあるストローのゴミを折りたたんだりちぎったりしている落ち着きの無いお兄さんの指先をじっと見つめながら話をした。ラインでしたような下品な話は一切ない。お兄さんの口調は、多様されていたかわいい顔文字が似合う話し方じゃなかった。もっとずっと穏やかで、眠たそうで、そしてすこし訛っていた。破廉恥な動画の中ででいかにも男性らしいエロい言葉を運んでいた声は本当にこの声だったかしらと耳を澄ませるけど、うまく思い出せなかった。

 

チェックインの5分前になってホテルに入る。いつもはラブホテルのサービスタイムを使うから時間がたっぷりあるけど、今日はビジネスホテルだから短い。地方から数年前に上京してきたというお兄さんはラブホテルに強い抵抗感があるようだったけど、次会うならラブホテルをすすめようと思っていた。でも実際に会ってみるとなるほど、彼がラブホテルの広くて開放的な部屋でくつろいでるところが想像つかなくて、次も薄暗くて狭いビジネスホテルで良いやと思う。

 

会う前、私は今までで見たことがないぐらいエロいハメ撮りいくつも送ってもらっていた。私はその動画を見て完全に気持ちが盛り上がっていたから、こんな数時間で足りるかなー。なんならホテルをはしごしてもいいかもって気持ちだった。

結果として、4時間はあっという間に過ぎた。もう部屋を飛び出さないといけない時間だとわかった時、お兄さんは心から驚いた声で「4時間に感じた?」と言っていた。わたしは普段からラブホテルを使ってて時間感覚があったから、正直そろそろ4時間というのはわかってた。セックスするのに3時間や4時間は短い。でもお兄さんの体感時間が短かったというのはなによりも嬉しいことだった。

「私も短く感じた」 本心でそう言った。

 

 

出会い系で知り会った人とその日にセックスするのは私の生活の一部なってるけど、これって異常なことだよなーって気が付いたのは今朝だ。遠足の前みたいにワクワクしている自分に気づいて、おかしいなって思った。だって見たこともない相手とセックス目当てにいきなり会うなんて本当は怖いはずだから。 

 

ホテルを出てファミレスに入る。ご飯を食べてると腹痛がして、でもなんでもない顔をしてトイレに行く。下着と、トイレットペーパーに薄い血がついた。処女を失う時でさえ血は出なかったのに、

 

彼の行為は激しかった。事前に見せてもらっていた動画のまんまで、でもわたしは動画の中の知らない女子大生のように気持ちよさで体を震わせることはできなかったんだ。少し痛いぐらいだった。刺激でたくさん声が出た。ゆっくり動いてと何度か言っても、なかなか相手の手や腰の速度は落ちない。セックスの仕方ってそんなに柔軟なものじゃない、とくに男の人はそう。

こういう時にきちんと痛みを伝えられないのは本当に良くないことだと毎回思う。きっとこんなこと友達に言っても信じてもらえないと思うけど、たとえ2年前からセックスしている相手でも最中に顔を見ることができないぐらい私はシャイだ。正常位では両腕で顔を覆うのが癖になっているぐらい。

 

彼とのセックスは正直期待していたものではなかった。いや、彼のセックスは動画のとおりの激しくてとてもエロいセックスだったけど、動画の中で大きく喘いでいた女子大生ほど私の体は激しさに耐性が無かったから。ちょっと期待しすぎていたところもあったけど、でももちろん彼のセックスが痛みだけだったわけじゃない。いつも耐えてる程度のヒリヒリとした痛みと一緒に、心地よい快感もあったし、声を出さないと耐えられない程の強い快感もあった(強すぎる快感は快感に感じないけど)

 

それになにより彼の動画には写っていなかったセックス前後の穏やかな時間がとても心地よかった。一言も喋らない。お互いの顔がうっすらと見える程度の暗い部屋。部屋の外からずっと聞こえていた外国語の会話、いつまでも温まらない冷え性の足先。セックスの快感は共有できなかったけど、抱き合って目を閉じた時の心地よさには手応えがあった。きっと向こうもそう感じているという手応え。

 

知らない人と会ってこういう手応えがあるのは本当に心地よくてやめられない。私にとっての一番の麻薬だ。打ち解けあって好き合っている幸福なカップルには味わえない感覚がある。退廃的なボロアパートという舞台が似合うような、何もかもが堕落した関係。過去も未来もなくて今だけ。お互いがただただ独りよがりな存在なのが、痛いぐらいわかるの。

どんな相手とするよりも、信頼感も期待も無いこの時のキスがなによりも官能的だと本当に思う。抱き合うと、捨てられた猫になって寄り添っているような気持ちになる。薄汚くて身寄りが無い、人に指を刺されるような滑稽な格好で、お互いの匂いを馬鹿みたいに嗅ぎ会うの。私達の間にはなにも無い。でもなによりも必要なもののようにお互いを激しく求めあってる、触れ合っていないとつながりが切れるのがわかるから。極端なぐらい2人の間に何かがあるのを怖がる、空気でさえ冷たい暗闇みたいに怖い。気持ちは決して軽く無いの、むしろなによりも暗くて重たい。

 

 

今日味わったこの堕落した感覚が本当に心地よくて、ダメになりそうなぐらい。溶けそうだねって彼が囁くより前から私の頭は部屋の匂いで溶け始めてたんだ。この感覚が長続きし無いのはわかってるけど、久しぶりのこの官能的な気分にもうしばらく浸っていたい。またこうしてどんどんダメになっていくんだって思いたいの。

 

念願のピンク映画館に行った話〜上野オークラ〜

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どうしても行きたかったあの場所

その存在を知ったのはいつのことか忘れてしまったが、今現代にピンク映画館なるものがあると耳にしてから私はすっかりピンク映画館のことで頭がいっぱいだった。

そしてついに今年、念願かなってピンク映画館に足を運べる機会を得たのだ。

いくら思いやりのあるヤリマンである私であってもさすがに1人でそんな場所にいくのは危険な気がして、いつもの一人旅のごとくふらふら足を運ぶことはできずにいた、しかし、2年程仲良くして頂いているお兄さん(かたくなにセフレとは呼ばない)にだだをこね続けついに一緒に禁断のピンク映画館に行ってもらえることになった。

 

場所は調べると一番ヒットする上野オークラに決定。上野オークラに行ってきました系ブログもしっかりと読み込み、予習はバッチリだった。とにかく2階にだけはいっちゃだめなんだな!

 

いざ上野オークラ

意気揚々と上野駅で待ち合わせ上野オークラへ!当日はたしか土曜日か金曜日で、辺りはすっかり夜になっている時間帯だった。道はお兄様に任せていたためまったく覚えていないがとにかく上野公園の入り口?を右手に、アメ横を左手に見ながら大通りを突っ切ると上野オークラが見えてくる。

まさかこんな大通り添いにデカデカと看板があるなんて、と驚くほど目立つサイズの看板がたっている。

どうやら最近移転したようでそんなような案内板があった。案内板の指示にしたがって大通りから一本奥に入る道に進むと左手にそれらしきビルが。電気がこうこうとついていて明るいガラス張り、しかし暗闇にまぎれてエッチな女優さんたちの看板がたくさん張り出されていた。なんと私の大好きな一押しAV女優涼川絢音ちゃんと会えるイベントがやっていたらしい・・・・そもそもイベントなんてやっている程活気づいている場所だとは思っていなかったのでそこでも驚いた。もっと淡々と映画だけを流している場所かと・・・

 

さてさて中に入ると更なる驚きが待っていた

 

まず、まるで市役所のような簡素な外観の扉を開けると目に入ってくるのは券売機だ。映画のチケットはすべて券売機で買う仕組み。2階席用のチケットはボタンが別れていたような気もするけど忘れた。値段は普通の映画館と同じぐらいで1000〜2000円だったと思う。

そして券売機から振り返ると目に飛び込んでくるのは待合室の椅子でくつろぐお客さんたちの姿だ。基本的にはおじさん、あるいはおじいちゃん以上の年配の男性がほとんど。ピンク映画館という場所がそう見せているのかもしれないがどことなく異様に見えなくも無い・・・そして中には女装した男性の姿も2人程見受けられた・・・同年代の男の子の女装なんかには見慣れているはずだったけど、赤の他人の成人男性が同じ閉ざされた空間で女装をしている姿をみるとなんだか胸がザワザワするもんだ。

そもそも上野オークラに入った瞬間から外界とはあきらかに違う空気に包まれた感覚になった。それは私がたんにビビっていただけかもしれないし、あまり見かけない私達カップル客に向けてジッと視線が集まっていたからかもしれない。

 

いよいよ劇場内へ

待合室の異様な空気を背中に感じながらスススス・・・と奥に進んで劇場の大きな扉を開ける。大きなスクリーンではSFもののAVが上映されていた。

お客さんの数はけっこう多いが、座席は1/3ぐらいしか埋まっておらず、その他数十名のお客さん(おじさま方)はスクリーンから見て後方の壁、つまり劇場出入り口の扉がある壁沿いにずらっと並び、立ち見で映画を見ている。異様な光景だ。なぜこの人たちは席に座らないんだろう。

扉を開けた瞬間から立ち見のお客さん、座席に座っているお客さんからも視線が飛んで来て私はもう前が見れない程萎縮していた。完全にビビりまくっている状態だ。

 

座席に座ってのんびり映画を見ようと楽しみに思っていたのにそういう場所ではないらしい。お兄さんに促されて、空いていた角の方に移動して映画を見始めた。

 

しかし、お客さんの雰囲気は異様で、座席から立ったり座ったり、うろうろしたり、立ち見の人も常にうろうろうろうろ劇場内を歩きまわっている。

どうやらしばらく映画を見ていると、この劇場内の落ち着きの無さの原因が私であることに気づく。なぜなら、皆が私のことをじろじろと眺めてくるからだ・・・!!!

うろうろと立ち上がったおじさま方がつぎつぎと私の前を通り過ぎていく、そして通り過ぎざまにじろりと私の方を眺めるのだ。中にはぐっと顔を近づけて足先から舐めるように私を見ていく方もいた。どうやら本物の女かどうか確かめに来ているらしい(?)

女装している方は多いようだが、本物の女がくるのはそうとう珍しいことのようだ。

私がビビリきっている時、劇場の落ち着きの無さに気づき「どうしたの?」と言いながらさっそうと登場した女装のお姉様が女神に見えた。それぐらい男の人に囲まれすぎているあの状態は恐怖を感じた。

 

一方そのころ隣に居るお兄様はというと、しらないおじさんにめっちゃ絡まれていた。「なにしにきたんですか〜」に始まり「彼女さん(もちろん私のこと)は露出癖とかないんですか?」「けっこう露出していく方もおおいんですよ」などなどかなり過激なことも口にしていた。とにかくずっとお兄さんの隣に居座りひたすらなにかを話し続けている。もしかしたら私と露出プレイをするようにうまく誘導したかったのかもしれない。池袋のピンク映画館にはそういう目的の変態カップルがおおいとかなんとか話していた。実際ピンク映画館にはハプニングバーもどきのイベントを求めて足しげく通っているお客さんも多いみたいだ。

あまりにもしつこく話しかけているので私の方から「話しかけないでください!」と言いたいところだったが、そんなことを言って急にキレられたら怖いし、ただでさえ目立っているのにこれ以上目立ちたく無いという気持ちが強くとにかく声を発することができなかった。

 

劇場内は終始そんなカオス状態だった。私の前を何人ものおじさんがぐるぐると行き来し、眺めてくる、そして隣ではお兄さんが知らないおじさんにずっと話しかけられている。映画なんてゆっくり見ることはとても出来ないし、そもそも行き交うおじさんと目があってしまうのが怖くて顔も上げられない状態だった。

その状態で30分ぐらいはじっとしていただろうか、お兄さんに「もう行こうか」と言われてやっとの思いで外に出た。なにせ「もう帰ろう!」と言いたいところだったが萎縮してぴくりとも体が動かないし声も出せなかったんだから。

 

上野オークラを出ると「気が済みましたか?」とお兄さんに呆れ顔で言われたきがする。いつものホテルをもとめて新宿に向かいながら、もうピンク映画はとうぶん行かなくていいね。と2人でためいきをついた。初めてのピンク映画はそうぞうよりもカオスで厳しいものだった。とても楽しめたとは言えないけど、もしももしもまた機会があるのなら是非行きたいと思ってる。

 いつかはピンク映画館にでもハプニングバーにでもどうどうと遊びにいって楽しんで帰って来れるような女になりたいもんだなあ。